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御手洗冨士夫キヤノン流現場主義 ( 坂爪 一郎 )

キャノン社長、御手洗冨士夫氏への数日にわたるロングインタビューをエッセイ風に書き下ろしたものである。主な内容は、<P> ①1995年社長就任以来、何を変革してきたか<BR> ②キャノンの企業文化<BR> ③御手洗流経営哲学<P>の3つに集約される。<P>創業家の2代目社長のもと、終身雇用を守り家族主義的経営を標榜する町工場的な顔と、国内4万5千人、海外5万7千人の社員を擁するグローバル大企業の顔が両立しているのが、実に不思議な会社である。<P>社外取締役を否定するなど、独裁的カリスマ経営者の顔も見えるが、全体的には言うことにいちいち説得力がある。理にかなっている。<P>例えば、青色ダイオードの発明対価訴訟については、事業リスクをとらない従業員に対して事業利益を基準にした対価を与えるのはおかしい、という。まことに理にかなっている。中村氏は発明対価を得たかったのなら10年でも20年でも無給で研究を続けるべきであった。<P>800人の幹部にボーナス明細を手渡しする、という話にも恐れ入った。率先垂範という言葉があるが、コミュニケーションが大事、というのは簡単、それをこんな形で実践するのはなかなかできることではない。<P>経営者本は世に多いが、大企業ともなると苦労話ひとつとってもスケールが大きいし、成功哲学も人それぞれ味わいがあるが、本書もまた、御手洗氏個人の魅力がよく出ているという点で、大変興味深い。町工場とグローバル企業が両立する不思議の原因が垣間見えた気がした。

   企業の持続的発展の為には、従業員の生活の安定、投資家への利益の還元、社会貢献、先行投資の為の資金の確保を図ることが大切であり、その為には、「利益の追求」が必須である。これが、社長就任時の訓示であり、御手洗キヤノン経営の要諦であると言う。<P>   「部分最適」から「全体最適」へ意識改革して、連結決算主体の経営と連結決算ベースの事業評価システムを構築し、「損益計算書重視」から「バランスシート重視」のキャッシュフロー経営に転換。<BR>コスト構造を抜本的に変革する為に、セル生産方式やサプライチェーンマネジメントを導入。工場の無人化促進。高度な技術力に基礎を置いて経済・市場環境を見極めて経営を変えてゆく「変身力」。<BR>本格的な基礎技術の確立がなければ製品化しない、利益を出せない・投資を回収できない事業はやらない等「選択」と「集中」の経営、多角化と国際化戦略の推進による業務拡大と企業価値の増大。等々、詳細に御手洗キヤノン経営の真髄を開陳している。<P>   興味深いのは、商法改正による社外取締役を置く委員会制度に全く関心を示さず、現行の監査役制度でコーポレート・ガバナンスは十分だと言い切っていること。(余談ながら、毎朝実施される「朝会」や委員会制度等役員間のコミュニケーションは秀逸)<P>   日本の経営のあり方が問われているが、社員のロイヤリティと活力に信を置く性善説に培われた終身雇用制と監査役制度等の日本的な経営の良さを維持しつつ、果敢に最先端を行く国際基準の経営戦略や戦術を駆使するキヤノンの「ハイブリッド(?)経営」こそ、今日のグローカル時代に生きる日本のエクセレント経営のワンモデルだと言える。

キャノン社長の御手洗氏が業績の好調な経営戦略とその組織のしくみを語るという前書きであるが、タイトルの「現場主義」については十分に語られていない。内容はキャノンの会社全般についての話題に始終し、読者の期待するキャノンの現場主義のノウハウの記述はほとんどなかった。<P>御手洗氏自身が利益(キャッシュフロー)重視の観念を身につけた米国勤務時代のエピソードが興味を引いた。日本流のシェア、売上げ重視の観念で米国で働き、帰任時前の利益は満足いくものでなかった時に、現地の幹部に銀行にお金を預けて得る金利よりも低いようなビジネスは事業ではないと諭され、売掛け金の回収等の利益改善を行ったとの事であった。このアドバイスは、米国人のビジネス感覚から言えば当然の事であるが、御手洗氏には洗礼だっただろう。<P>賀来前社長の後、社長を継いだ95年当時はキャノンも多角経営・事業部制のマイナス面が如実に現れ、会社の経営体力を落としており、利益・キャッシュフローを重視した選択と集中の改革を行ったとの事だった。PC事業の撤退とデジカメの初期での失敗など、当然、失敗したプロジェクトもあったようだ。<P>プリンターのトナー・インクカートリッジなどを収益とするインストール型のビジネスモデルとパテントライセンスがキャノンの収益の源泉となっているはずだが、このあたりの読者が一番知りたい所の仕組み・組織に関しては触れていない。<P>インタビューベースの著作でもあり、株主にむけたIR情報のような優等生の公的発言が多かったが、実績さえ、あげていれば、理屈はあとから何とでも言えるといったところか。理論は現実には勝てない。

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