坂の上の雲〈4〉 みんなこんな本を読んできた 坂の上の雲〈4〉
 
 
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坂の上の雲〈4〉 ( 司馬 遼太郎 )

徹底した事実調査を背景に、著者の鋭いメスが容赦なく振り下ろされる人物が多く登場します。<P>神格化までされた、乃木将軍もその一人。<P>藩閥政治の寵児として、出世を果たしたがその能力はと言えばはなはだ疑問であるとばっさり。歴史に弱い私でも乃木将軍の話は聞いたことがありました。その記憶と著者の描写とのあまりの落差に驚きを禁じえませんでしたが、著者の描写が限りなく事実に近いのだろうと思います。<P>人格には優れていたが、知識がなく、結果能力のない参謀である伊地知を見極めることができなかった。それが旅順総攻撃の惨憺たる悲劇を生むことになる。<P>鉄壁の要塞を前に、初めて目にする機関銃の掃射で、仲間の兵士がごみのようにあっけなく殺されていく。殺されても殺されても、士気を失わず、国家防衛のため自らの命を喜んで差し出す兵士達の凄まじいまでの気迫、気概に心を打たれると同時に、多数の死傷者を生み出した作戦の虚しさにやるせなさを感じました。

主に陸軍の戦闘が中心に描かれる第四巻。秋山兄弟の出番も減り、戦闘ドキュメント調になっています。初めの二巻で主役の1人であった正岡子規の人物描写が好きだったので彼の死以降は読んでいて少々寂しくなりました。<P>明治期日本の心意気を感じる前に、おびただしい数の兵士が戦闘で死んでいく様に圧倒されます。いかに無能であれ、司令参謀を更迭することの不利から、無駄死にするとわかっている兵士を大量に投入しつづける旅順攻撃。戦争とは非人間的なるもの、と今更ながら痛感します。<P>旅順参謀の無能ぶりが繰り返し語られ、読んでいて切なくなるほど。…とその時、その無能な参謀の性格を評して「自分の失敗を他のせいにするような、一種女性的な性格の持ち主であるようだった」との一文を目にし、はあ?と思わず読み返しました。「女なんぞに私の小説を読んで欲しくはない」という著者の声が聞こえた気がして、激しく幻滅。 おじさんくさい読み物は嫌いではないので時々読みますが、こんな経験は初めてです。明治期の日本は興味あるテーマなので、第八巻まで読み通すつもりですが、同じ著者の作品は二度と読みたくならないかもしれません。

旅順艦隊の殲滅と奉天の包囲と優勢な戦況になったが、実は日本の陸軍はギブアップ寸前だった。講和を第三国に依頼するが、条件があわず、戦争は終わらない。<P>クライマックスはバルチック艦隊の全滅である。海路、停泊地での燃料の補給にも苦労しながらやってきた艦隊を日本海で待っていたのが東郷、その参謀の一人が秋吉真之である。それまで愚鈍な戦いの連続であった日露戦争の終結は劇的ともいえる秋吉の作戦の成功により、バルチック艦隊を壊滅させ、日露戦争の勝利に至るのである。<P>日本海にやってくるか、それとも太平洋から津軽に廻るか、秋山は考えすぎての不眠状態、バルチック艦隊の襲来を見て小躍りしたくらいだった。彼は思考力をすべて、この戦いに使ってしまった。そして、勝利は自分の作戦ではなく天の力という神秘主義者の様相をなし、戦後まもなく他界するのであった。<P>小説の始めに登場した子規をなぜ日露戦争の物語で語ったのか。それは定かではないが、一巻のレビューでコメントしたように、文学を選ぶか、軍を選ぶかという選択があたりまえの時代であったのだ。本レビューのタイトルの有名な電文は簡潔・明瞭かつ、行間に戦況の意図がこめられている。まさに子規のめざした近代の写実主義の日本文学としての俳句のように、戦争に必要な実用性をそなえている。これが司馬さんが子規を登場させ、真之との同郷の友という関係以上のことを示したかった理由かもしれない。<P>明治維新後のわずか30年の間に列強に勝利した、日本軍とその背景としての近代(西洋)化は驚嘆すべきものである。<P>小説の主人公の2人の兄弟は日露戦争の記述の中でその活躍がスポット的に語られ、司馬さんが日露戦争を陰の立役者として評価し、世の中に知られるようになる。<P>本小説は二人の活躍と同時に、司馬さんが古本屋の棚でほこりのかぶっていた、いささか事実を歪曲した日露戦争の公史を膨大なエネルギーをかけてほこりを払うように調べてあげて直し、40歳代の10年をかけて、全て注いだ労作の結果として、日露戦争の真実に近い姿が浮かび上がったのである。

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