上司は思いつきでものを言う : 橋本治

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上司は思いつきでものを言う ( 橋本治 )

「思いつきでものを言う上司に振り回されないためにどうしたらよいか？」 「なぜ、思いつきでものを言う上司が増えたのか？」 この本の主題は上の２点だが、前者についてはかなりあっさりと答えを用意している。大部分はむしろ後者の問題について、明治時代にまで遡り、今では忘れ去られた（または政府によって葬り去られた）「儒教の得」を絡めて解説している。そういう意味で、いわゆる普通のHowTo本的なビジネス書とは異なっている。「よく考えて」と「ちょっと考えて」の違い。 なぜ日本のサラリーマン（おやじ）たちは、戦国武将や幕末維新の話が好きなのか。どうして「官」は「民」よりえらいということになってしまうのか？ 作者の仮説をもとに、普段なにげなくやり過ごしていることが斬新な切り口で語られており面白い。人間関係はよく国同士の関係にたとえて語られることもあるが、この本でも最終章では今後日本がたどるべき道しるべを記載している。「どうして、日本は世界一の経済大国から転落してしまったのだろうか？」 「どうして日本人が国際競技で優勝すると、すぐに国際競技のルールは変えられてしまうんだろう？」 一見関係ないように見えるこのふたつの問いが、実は同じものに根ざしていることが明快に語られている。そして、それを解明することにより、「それで、日本はどうするのか」が語られてます。 実はこれの解答も「思いつきでものを言う上司に振り回されないためにどうしたらよいか？」と同じものになってます。 でも、そこは橋本治らしく「それで、僕らはどうしたらよいのか」までは、語ってくれません。「そんなの自分で考えればぁ」そうつぶやいている作者の姿が見えてきそうです。

前半は、「上司は思いつきでものを言う」理由についての説明で、後半が会社組織を中心とした日本社会論となっている。個人的には前半部分は「橋本節炸裂！」ってかんじで楽しく読んだが、後半がいまいち。 「現場」「官僚」「儒教」「民主主義＝能力主義」等幾つかのキーワードが出てくるが、よく整理されておらず分かりにくい上、内容も平凡に感じた。 この本の主旨を無理にまとめると、「会社は現場を大切にしなければならない」、「アメリカ（や中国）は能力主義だが、日本の会社は能力主義でない（からダメだ）」というところか。陳腐な結論のように思う。 橋本ファンの僕としては残念。

はい、おもしろい本です。 でも、肝心な認識がぬけているように思います。 それは、管理者というのは、人を管理するというよりも、仕事（の遂行や達成）を管理するということです。当たり前のことを書いてすみません。でも、その当たり前の認識が全然感じられません。それから、世の中には、思いつきさえしない上司という、もっとひどい人たちがいるんです。「思いつきで言うな」というのは、どちらかというと、ダメな上司の方が言うせりふなんじゃないでしょうか。なんだって新しいことは、最初は思いつき。儒教なんて、はっきり言って関係ないと思う。それこそ思いつき。 儒教は官僚の生き方を示したものだけど、それは実は上意下達ではない。 徳というより仁であって、もっと、誠意正心ということが基礎にある。 格物致知誠意正心修身斉家治国平天下ということが儒教の考え方だと思う。

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