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「特攻」と日本人 ( 保阪 正康 )

特攻というものがどのような精神状態の下に行われたのか、そこにメスを入れる「怒り」の書。著者は、特攻と言う生命の尊厳を著しく損なう無謀な作戦がいかにして持ち上がり、それが戦時下の日本でどのように喧伝され、受容されたかを、特攻隊員の手紙、手記などを通して明らかにする。「特攻隊員犬死論」も「特攻隊員英雄論」の何れも、特攻隊員に対する冒涜である、と著者は説く。特攻を強制しておきながら、責任逃れをした指導者に対する糾弾の舌鋒も鋭い。特に、精神論の横行は、決して過去の産物ではなく、どの時代にも復活しうる魔物であることを、認識しておく意味で、この書物のもつ意義は大きい。多くの日本国民が一度は目を通しておくべき書物と言える。

 小泉首相は、鹿児島県知覧町にある特攻平和会館を訪れ、ポタッポタッと涙をこぼした。非情と言われる首相の涙を私は単なる感傷とみなしたくない。<BR> それに対して、高校生のころから「きけわだつみのこえ」に揺さぶられ、昭和史を探索しながら。四十年近く、その記念館を訪れなかった。涙が止まらないとの不安があったからだ。<BR> 著者は、若く理不尽に死んだ特攻隊員について、「英霊論」の側にも、「犬死に論」の側にも立たない。<BR> 遺書の感傷的であったり、文字面だけの表面的な皇国史観の解釈をも拒絶する。また、自決した特攻の生みの親と言われる大西瀧治郎第一航空艦隊司令長官を告発したりもしない。<BR> 遺書や遺族の追跡から著者が読みとったのは、共同体、肉親への愛情に基礎を置く下部構造としてのナショナリズムが、皇国史観としいう上部構造のナショナリズムに絡め取られていく過程である。<BR> 本来は保守の側に立つ著者は、そのプロセスに激しい怒りを寄せている。著者は、オーラルヒストリーをもとに、昭和史を地道に追い続けてきた在野のジャーナリストである。このところ、立て続けに刊行している著書は、長年の地道な努力が結実した傑作が多い。<BR> とても、私のような文献学者には及びもつかない到達点である。<BR> 著者の「あとがき」の一部を引用したい。<BR> 「日本社会は、そして日本人は戦争という軍事行動に向いていないとの実感である。私たちの国は、ひとたびこうした行動に走れば、際限のない底なし沼に落ち込んでいく性格をもっている」<BR> 涙でごまかすまいと決意して記念館を訪ねた著者は、それでも落涙する。<BR> いま、大切なのは、感傷だけでも観念だけでもない歴史認識であろう。アカデミズムの学者には決して書けない著書である。<BR> 著者の長年の努力には頭を下げるしかない。<P> 

近現代史、特に昭和史の実証的研究を志す著者は、研究の過程で特攻隊員の手記や遺稿を未公表分も含めて数多く読み込んでいる。そして多くの場合、それらを涙なしでは読めないとも告白している。著者と同様に、多くの人々が「英霊の中の英霊」である特攻隊員の遺品に接して涙している。しかし、と著者は言う。ただ単に涙しているだけでいいのだろうか。彼らは何故死ななければならなかったのか、”もっと理性的にこの特攻作戦やそのシステムを問い直すことこそ重要”な時期にきているのではないかと。<P>軍事作戦とは本来、敵を倒して自らは生きて帰ることを前提としたものであるはずだ。特攻作戦のような、生還の可能性の全くない軍事作戦を命じた国は、いまだかつて日本国以外にはない。ところが、直接命令を下した指揮官たちは、口々に”われわれもすぐに君たちのあとを継いで飛び立つ”といっておきながら、後に続いた者はほとんどだれもいなかった。また、戦後生き残った最高指導者層は、(神風)特攻隊の発案実行者はあくまでも大西瀧治郎中将である、として全ての責任を彼に押し付け、自らの関与を完全に否定し続けた。<P>特攻隊員が手記や遺稿で訴えたかったのは、このような当時の日本における指導者層の理不尽な行為ではなかったか。あるいは、そのような体制を許したすべての国民を含む日本国国家そのものではなかったのだろうか。若い彼らには夢があった。やりたいことがたくさんあった。生きていたかった。深い苦悩を抱えて、特攻隊員たちは飛び立っていった。彼らが自らの死をもってわれわれに訴えているのは、”(彼らの)死を生み出した時代を心底から清算しなければならないという覚悟である。”<P>著者は新しい特攻論の必要性を訴えている。日本国民全てが自らの頭で真剣に考えなければならない重要なテーマの一つだ。まずは遺書を涙せずにしっかりと読み込むことから始めよう。次の特攻作戦の実行を防ぐために。そして最後に、このように崇高な遺書を残した特攻隊員の死は、決して「犬死」などではない。

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