～下手したら奥田さんの本で一番好きです。読後感最高でした。<BR>最初の頃は読んでいてちょっと億劫だなぁ、という点が多々あったんです。何のためにこれ書いてんのかなぁと。でも、気付いたら引き込まれていました。これ明らかに最初から二部の展開用意されてないですよね。行き当たりばったりで辿り着いたというか。プロットに縛られてないというか。<BR>いつも～～思うんですが、奥田さんという人は人間を描くことに長けている人だと思うんです。一人一人しっかり人間を描いた結果、ストーリーが出来上がっているというか。でも、それは現実の世界そのままの事だと思うんですよね。人と人とが何かグチャグチャやり合うからニュースは生まれたり、ストーリーができたりみたいな。うまく言えませんが。<BR>今回も嫌いなキャラ～～クターは一人もいませんでした。みんなとても魅力的です。<BR>まぁ、ああだこうだ言わなくても、南の島に住みたいなぁ、と思わされた時点で、この本に出会えた価値がありました。まだしばらく奥田英朗に着いていくことになりそうです。～
30年そこそこしか生きていませんが、私、無駄な正義感を持ち合わせています。これがあるためによそ様から見たら無駄に闘ってしまいます。主人公の父から言わせると「腹の虫」がいるんです。生き辛さも多少感じていましたが、これからも一生この「腹の虫」と共生していってもいいかな、と肩を押してくれた作品でした。世が世だったら、さくらさんみたいになってたかもな、と一抹の不安も感じましたが、それもいいかなと思ったりして。オルグかな、これ。いやはや、奥田さんにオルグされちゃったサー。
やっぱり彼の一本柱は”切ない人間愛”。切り口は違えどパターンは同じという小説の流れだが、読んでいて、もはや妙な安心感を覚えてしまう奥田ワールドである。彼にかかればどんな題材も面白ネタ。その辺にころがっている今風のものから、風化しかかっていても、人によっては、しっかり根づいてしまっているもの、忘れていたことを思い出させて、ノスタルジーに襲われるもの、と、人のいるところ、老若男女あたりかまわず小説のネタには事欠かないとばかり、それを、優しさを持って、からかったり、撫でてみたり、背中を思いっきり押したり、と奥田の筆力には若さもあり、今後もしばらく楽しめそうである。
