コミュニケーション力 : 斎藤孝

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コミュニケーション力 ( 斎藤孝 )

今の若者を見ていると、コミュニケーション力が落ちていると感ずることがある。それは表現力の拙さや論理力の弱さ、話術といった種類のものではなく、相手の心を感じたり読んだりする部分の弱さなのだと思う。ケータイ、コンビニ、ネットに象徴される社会環境は、一方通行で自分勝手なコミュニケーション文化を育みつつあり、このまま放っておいて、若者も含めた現代の日本人によりよいコミュニケーション力が育つとも思えない。そうした現状に一石を投ずるのが本書である。 　「声に出して読みたい日本語」「読書力」で有名な齋藤孝は、コミュニケーションの基礎を人間理解力と捉え、それは一つのワザであるとも言っている。つまり、コミュニケーションは「文脈力」、すなわち相手の言っていることを言い換える力に支えられ、響く体によって通い合う。その基本、そして奥義は「沿いつつずらす」ことだという。 　齋藤孝のコミュニケーション論の要をなす、気合いのこもった一冊だ。文章のスピード感、テンポの良さも本書の特徴である。

日頃、自らの「会（対）話力」に関しては無頓着な私であったけれども、本書を読み反省させられるべき点が多々あったと思われる。 　本書は、所謂ハウ・ツー物とは幾分趣きを異にする。しかしながら、例えば第２章の「コミュニケーションの基盤」などをみると、果たして“打てば響く”ような会話（対話）が他者と成立していたのか、甚だ疑問を感じてしまう。 　著者には、本書の姉妹編ともいうべき『読書力』（岩波新書、０２年）も刊行されている。本書の「あとがき」にも「読書はコミュニケーション力を本格的に鍛える基礎トレーニング」と記されているが、『読書力』の方も“読書の在り方”について自省を迫るものがあり、是非読んでおきたい１冊だ。

文庫だけあって内容も簡潔にまとまっていると思う。 また単なるノウハウを提示するにとどまらず、 どのような訓練方法でコミュニケーション力を 伸ばせるかについても言及している。 そういったことから、他人とうまくコミュニケーションを 取れない人には大いに役立つものだ。 ここまで賞賛しておきながら、なぜ私は星を５つに せずに４つにしたのだろうか。斉藤氏は人間ジュークボックスになるなという 言葉を書き記している。正確な定義は忘れてしまったが 「人間ジュークボックスとは違う人に対して同じことばかりを 語る人物」を指す言葉であった気がする。 実際僕も一度他人に言って受けたことは何度もリサイクルして 利用する癖がある。 そういったことから考えて私は完璧なジュークボックス であると言えるだろう。私が考えるコミュニケーションをする上で大切なこと。 それはまず第一に相手を楽しませ、心地よい時間を共に 過ごせるよう配慮することであると思っている。 だから、一度相手に楽しんでもらったネタはなんら再利用しても 問題ないように感じている。 さらに斉藤氏は別の本の中で「一度成功した体験を何度も利用することは大切なことだ」という言葉を残している。こういった二つの理由から人間ジュークボックスであったとしても 卑下する必要もないし、落胆する必要もないと思う。

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