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知識人とは何か ( エドワード・W. サイード Edward W. Said 大橋 洋一 )

私は本書を読み、大いに考えらせられ、啓蒙させられた。いわゆる知識人が急増した我が国において、本書は的確な批判と多くの示唆に富み、知識を生業としている人たちに是非読んで頂きたい一冊である。 <br /> <br />サイードは言う。「聴衆に迎合するだけの知識人というものは、そもそも存在してはならない」(19頁)。我が国には、テレビの視聴者に、商業用雑誌の読者に迎合しているいわゆる知識人がどれほどいるか、考えずにはいられなかった。また、サイードによれば、知識人とは体制や権威に迎合しない人物である。その分野の専門家ということで、権威や体制や組織からの恩恵を受けている知識人が多いか、考えずにはいられなかった。サイードによれば、「知識人は、アマチュアたるべきである」(136頁)。分化が進み専門家以外は、相手にされないこのご時世、この警句の意味は大きい。 <br /> <br />

 サイードの仕事は、『オリエンタリズム』に示された様に、文学者(知識人)と帝国主義支配の共犯関係を暴くことに向けられた。しかし、後にサイードは「知識人」と言うものを再び肯定的に捉え、自らその役目を引き受けようとする。ここに後期サイードの転回があるといっても言い過ぎではない。 たとえば知識人の代表格でありそれゆえ攻撃の的になるサルトルは文学者であり、「普遍的」な価値があることを主張していた。それに対して、フーコーは「普遍的」知識人という存在を疑い、グラムシを援用しつつ今や生産関係から超越した司祭型の「伝統的知識人」よりも、「有機的知識人」を重視したように見える。それは手に職を持ちつつ、そこから世界がどう見えるかを訴えるような複数のシステムに属している生活者+指導者のことである。工場労働者でありオピニオンリーダーでもある者だけが大衆文化の何たるかを語れる…。 しかし、サイードはこうしたグラムシの知識人像を受け継ぎながらも、なおも「普遍的」価値を追求することにこだわる。それは一見語義矛盾であるが、人間や知識人の終りを宣言したフーコーさえも街頭デモに率先して参加(アンガージュ)したことを思えば奇異ではない。実はサイードの知識人とは「批評性」そのものである。つまり一つの価値システムを自明視せず、外からそれを批判する単独者=亡命者。それは聖ヴィクトルの引用―「故郷を甘美に思う者はまだ嘴の黄色い未熟者である。あらゆる場所を故郷と感じられる者は、すでにかなりの力を蓄えた者である。だが、全世界を異郷と思う者こそ、完璧な人間である」に見事に集約されている。 <br />

サイードはパレスチナに出生し、アメリカを拠点にして世界にむけて孤立無援とも思える発言の闘争を続けた。そのサイードの心の底にはどのような精神があったのか。 <br />「知識人とは公衆に向けて、あるいは公衆になりかわって、思想、姿勢、哲学、意見を表象=代弁し肉付けし明晰に言語化できる能力に恵まれた個人ということである。…みずからの存在意義を、日頃忘れ去られていたり厄介払いされている人々や問題を表象=代弁することに見出さなければならない」 <br />「知識人とは亡命者にして周辺的存在であり、権力に対して真実を語ろうとする言葉の使い手である」 <br />サイードについて少し知った後で読むと、サイードがどのような心持ちで声を発していたかがしっくりとわかり、理想に忠実に自分自身をささげた姿に感動する。サイードの文章は繰り返しものごとを強調する面が多く、常に面白みをもって刺激的に読めるという感じではないのであるが、サイードの心底にこの書物で書かれていたことがあることを思うと、理想に一途に自身を捧げたその姿に感動せずにはいられない。 <br />「知識人とは」というよりかはサイード自身を知るに必須な一冊といえる。 <br />

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知識人とは何か&nbsp;&nbsp;&nbsp;パレスチナ生まれの批評家、研究者として、常に世界の現実に批判的な目を向け、政治的発言、行動もいとわなかった著者による精神的自叙伝。『オリエンタリズム』をはじめとする主著の多くは学術的な色彩が強いが、本書は英国BBC放送向けに行われた講演をまとめた内容だけに、比較的平易な用語でつづられている。それだけに、20世紀後半を代表する世界的哲人の膨大な業績のエッセンス、入門編として位置づけることもできる1冊である。 <p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;主要なテーマである知識人論に関する主張は明確だ。単に知識を持つ者のことではなく、自立的に自己を見つめる「永遠に呪われた亡命者」こそが知識人なのだと著者は説く。権力に迎合せず、狭い専門性に閉じこもることなく、少数派であることを受け入れる。そんな知識人の特徴が、「大衆」「アマチュア」「周辺的存在」などといったキーワードとともに展開されていく。こうしたスタンスは、米国市民でありながら、繰り返し米国政府のパレスチナ政策に異論を唱えてきた著者の生涯ともぴったり一致する。 <p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;重要なのは、知識、批判、議論を自己目的化してはならないという論点だ。常にマイノリティーの立場に立ちながら、その集団に属することなく、むしろマイノリティーを選別する境界線の存在を否定していくのが本書における著者の戦略である。自己と他者を分かつものの歴史的な本質は何か。その点から目をそらさない本書における著者の思考の粘り強さは、それ自体が理想的な知識人としてのモデルを体現している。(松田尚之)
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