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市場原理が医療を亡ぼす―アメリカの失敗 ( 李 啓充 )

米国は日本と異なり、株式会社立医療機関が多く存在している。つまり、米国では医療は一般のサービスと同様に、営利活動の手段として認められている。ここでの「営利」とは、基本的に利益を配当性に分配する事を指していて、いわゆる「儲ける」こととは異なる点に注意が必要だ。また、米国には労働者を対象とする公的医療保険がない。これも日本とは異なる。医療経済学をある程度真面目に勉強すると、医療をレッセ・フェールにまかせては「市場の失敗」となる可能性が高いことは分る。にもかかわらず、米国では国民の殆どをカバーするような公的医療保険をつくれず、また医療を市場原理に委ね続けている。個々の医学領域では非常に優れた業績を発信する米国であるが、同時に国民に提供されている医療の質は極めて低いといわざるを得ない。米国の医療に社会保障としての機能はない。 <br />‥というような問題意識を持つには良書。

 「医の倫理」よりも「ビジネスの論理」が優先された時、どんな惨憺たる結果を招くかは、言わずもがなである。しかし、昨今「日本の医療に市場原理を導入せよ」という声が上がっているのだ。本書では、医療に市場原理を導入したアメリカの、空恐ろしい現実が切々と訴えられている。 <br /> <br /> 市場原理導入が医療にもたらすものは <br />1. 保険料負担の逆進性  <br />高齢者、低所得者ほど、高額な医療費を払わなければならなくなる。保険料は、企業での地位が高く収入の多い人ほど安くなり、企業のバックアップのない低収入の人ほど高くなる。つまり、今の日本と全く逆になる。その結果、無保険者が増える。本書の中に、無保険者が病気になったときの壮絶な借金地獄の例が紹介されている。 <br />2. 悪質な医療企業の増加 <br />「サービスの質を落としてでも価格を下げてマージンを追求する」悪質な医療企業が参入しシェアを獲得した場合、良質な企業も悪質な企業をまねないと生き残れなくなる。これを、「バンパイア効果」という。本書で、株式会社病院の恐ろしい犯罪例が挙げられている。 <br />3. 医療の質の低下 <br />営利病院ほど質が悪く、事故の率が多い <br />4. 医療費が抑制される保証は無い <br />市場原理を導入したアメリカでは医療費上昇が続いた。米国の製薬会社は市場原理の恩恵を享受する一方、米国民は世界一高い薬剤を購入させられている。 <br /> <br /> 本書では、混合診療が解禁されたときの危険性についても述べられている。特に政治家に読んで欲しい本である。 <br />

李氏の力作。前作に続き米国医療の本質を鋭く突いた「エッセイ」である。読者に方が注意されたいのは、これはエビデンスに基づいた論説ではなく、単なる意見、エッセイということである。残念なのは、折角の労作がやや偏向した印象を持たせかねない点だ。例えば、今回も「営利=悪」という点をことさら強調している。しかし、李氏が「営利病院の不当性」のエビデンスとして引用している米国内での論文や記事は、研究デザインもはなはだお粗末であり、おおよそ氏が強調している主張のエビデンスとしては不十分である。今回も、「事実に基づいた論説」ではなく、自身の主張を裏付けそうな事実だけを選択的かつ恣意的に寄せ集めて記述した、「論理の装いをしたエッセイ」であり、ハーバードの威光がそれを覆い隠すから尚更よろしくない。氏の影響力を考えると、この点は厳に襟を正して頂きたい。医学会への信頼性が揺らいでしまう。さて、質はもちろん、医療過誤・事故(いわゆるAdverse Events)の発生頻度においても科学的エビデンスに基づいた有意差は無い。いわば「どっちもどっち」である。Managed careに関しても、これがEBMやパス等のガイドラインづくり・標準プロセスづくりへの開眼を促したという肯定的な一面ほぼ無視し、ことさら「Managed care=営利=悪」というステレオタイプな視座から相変わらず抜けていない。「医師のAutonomy」と「非営利」はしばしば結果責任を上回る、つまり、医師のAutonomyを守る昔ながらの医療は、医療の質に対する甘えを生みやすいという指摘は、以前からハーバードで指摘されているのは、氏はご存知だろうか?折角の力作が、これではいかにも勿体無い。意図してか、意図せずかわからないが、政治的偏向をも匂わせかねない論調は、繰り返しになるが、勿体無い、の一言だ。残念でならない。自作への強い期待を込めて2点とした。

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