日朝交渉の舞台裏はここまで肉薄してもまだ、多くのナゾが残る。ただ、アメリカはもちろんだが、韓国、さらに中国、ロシア、おまけに北朝鮮まで全当事国の当局者を捕まえ、取材をして書いた国際的な力量には脱帽せざるを得ない。 <br />　六カ国協議の入り乱れる構図を鮮やかに解きほぐし、虫瞰図と鳥瞰図を巧みに組み合わせながら、朝鮮半島核危機の実像を描き出す手さばきはニクすぎる。新聞記者として間違いなく、一つの到達点であろう。分厚いがゆったりと活字を組み、読みやすさにも気を配っている。 <br />　惜しむらくは、著者のプロ並みの外交知識を前提にぐいぐい論を展開しているため、プロにはずしりと読み応えがあるが、ついていけない大衆読者が結構いるかも知れない。ディテールの描写へのこだわりもシビれるのだが、ちょっと策におぼれすぎた感も。上手の手から水が？ <br />