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「正しい戦争」は本当にあるのか ( 藤原 帰一 )

 本書の特徴の一つは、国際政治の本質を、難解なタームに頼ることなく極めて簡潔に説明してくれていることだ。藤原さんによれば、宗教的対立に根ざした中世の「正戦」は歯止めがきかず悲惨なものになりがちだった反省から、近代に入りリアリズムに基づいた戦争観が主流になってきた。しかし、戦争を制限する国際法規などが生まれ、次第に戦争が「違法化」されるようになると、戦争を理念としては否定するが、そのために「平和を乱した敵」への「制裁」としての戦争を徹底してして行うという、アメリカのような国が生まれてくる。これは一種の中世的な「正戦論」への回帰で、最近のアメリカの軍事行動が「何でもあり」で歯止めの効かないものになりがちなのはそのためだ、というわけだ。教科書的な説明によって、現在の国際情勢を歴史的な流れの中にきちんと位置づけてしまう手さばきは見事だ。 <P> 本書のもう一つの特徴は、あくまでも現実主義な立場から平和の可能性を追求しよう、という立場に貫かれている点だ。藤原さんは現代の戦争について常にリアルかつシニカル見方をしており、平和維持のために最小限の武力は必要だという立場から自衛隊のPKO参加を支持してもいる。しかし彼はそれと同時に、どう考えても不合理としか言いようのない政治決定によって、アフガンやイラクで多くの血が流されたことについて強い憤りを示してもいる。そういう「冷めた頭と暖かいハート」によって、一見「現実的な」立場からアメリカの対イラク戦争を支持したり、核さえ持てば日本は安全になると思い込んだりしている人々の議論の「非現実性」が一つづつ暴かれており、読んでいて非常に痛快だ。<P> 本書はいわば「常識ある大人の理屈によって書かれた戦争批判本」である。そのバランス感覚はむしろかつての高坂正尭さんなんかに近いものがあるんじゃないだろうか。

 欧州が長い戦争の歴史を経て手に入れた思想を人工国家アメリカは共有しない。ゆえに啓蒙主義以降の流れを逆流して宗教戦争=正義を叫ぶ戦争の時代に突き進んでしまった。<P> 過去において大きな戦争の終結は世界の体制や構造の変革につながった。しかしこれが冷戦の場合には違った。それまで代理戦争を戦わされていた国々は冷戦が終わると体制も変わらぬまま放り出されたのだ。これが今日の混乱の原因の一つである。<P> その時々の世界の力関係を分かりやすく描き出し、近代において世界では何が起こっていたかを教えてくれる。戦争をどうとらえるか、是非をどう判断するか、選択すべき行動は何か、を考える支点が得られた。一方、経済的な側面からの考察は少ない。

藤原氏が書いている通り、私にとっても渋谷氏は音楽の先生でした。この本はその渋谷氏のrockin'onから出版されており、藤原氏の功績は以下の点で大きいといえる。それは国際政治という一見堅苦しく(実際堅苦しい)思われる学問を、インタヴュー形式でわかりやすい形で説明したことである。それでいて、リアリズムに代表される国際政治の重要な概念を事例を交えて、丁寧に説明されており、専門書にも勝る。本来学者の提言等は広く世間一般に伝われなければ意味がないと私は考える。つまり、一般の人々がグラムシが唱えた有機的知識人、フーコーのいう特異な知識人になることにより、変革をもたらすことが大切だと思っている。この書はまさにその架け橋になるべくものである。装丁等もrockin'onということもあり、洒落ている。如何せん残念なことは、漢字にルビをふったり、本書で行われている専門用語の注釈・解説にとどまらず、「規範」などの一見見たところわかりそうで難しい言葉の説明を加えることにより、より広く中高生等にも読者層が増えると思える。さあ、音楽を聴いて、本書を読み、みんなで世界について考えてみよう!

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「正しい戦争」は本当にあるのか
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