ユニークな表紙デザインが眼を引き、「OJT」というタイトルに、パッと<BR>見、新入社員の教育訓練の手引書のたぐいのようだが、中身は工場におけ<BR>る生産革新、いわゆる「カイゼン」の本。<P>数社の事例を紹介しながら、カイゼン活動のポイントをわかりやすく説明<BR>しており、カイゼンの入門書として、あるいは、手頃な生産革新のケース<BR>スタディー本として良い。実務で生産管理に携わっていなくとも面白く読<BR>める。<P>物流におけるカイゼンの一事例もあげられており、また、どの会社でも<BR>カイゼンの導入にあたっては、従業員からの抵抗があったというという<BR>のは興味深い。<P>個人的には、この本を読んでふと気になったことがある。<BR>まず、カイゼンの根幹には、自らの仕事に対して、効率化への関心を「自<BR>発的に」提起する参加型の労働者像があるのに対して、課業を秒単位で計<BR>測し、個人作業の標準化をはかったテイラーの科学的管理法は、これまで<BR>の労働研究においては、「人間の機械化」、「労働過程からの疎外」とし<BR>てとらえられていたときたと思う。カイゼンとテイラー主義、一見、似た<BR>ようなものだがどこがどう違うのか？<P>一時期、ポストフォーディズム論などで、こうしたことが議論されて<BR>いたが、あらためて、検討する必要があると思う。<P>また、かつて、日本の製造業の強みとして、こうしたカイゼン活動が<BR>指摘されてきたが、ではなぜ現在「失われた10年」と言われるまでに、<BR>ものづくりの力が衰退したのか？カイゼンが根付いていなかったから？
トヨタとリクルートという考えられない組み合わせの企業がいつのまにか生まれていたことにまず衝撃を受けた。<BR> しかしそれ以上にインパクトがあったのは、現代企業の陥っている悪循環ー負のスパイラル構造の本質とそれに対するアンチテーゼを実にシンプルな論理で解明していく視点である。<P> 企業組織の変革はこの１０年世の中の企業がこぞって導入してきた成果主義型人事システムでは成し遂げられず、「愚直な現場での人材育成ーＯＪＴ」の実践こそがその有効な手段であるというメッセージには共感する読者も多いだろう。さらにこのＯＪＴソリューションズという会社が行っているサービス事例のレポートは生々しく説得力がある。<P> 読み終わったあと、感じたのは、童話の「青い鳥」の一番大切なものは世界中を探し回った挙句、自分の身近なところにあったという爽快感と新たな勇気である。<BR> 企業経営者や企業変革、人材育成に悩めるビジネスマンにお奨めの一冊である。
トヨタ自動車とリクルートという常識では考えられない組み合わせの会社がいつの間にか存在していたことにまず衝撃を受けた。しかし、さらにインパクトを受けたのは、現代の日本企業が陥っている悪循環ー負のスパイラルに対するアンチテーゼをかくもシンプルに解き明かす論理の明快さである。<P> 企業組織の変革は、この１０年間世の中の企業がこぞって導入してきた成果主義型人事システムでもたらされるものではないという著者のメッセージに共感を覚えるビジネスマンは多い。しかしそれが「愚直なまでの現場の実践による人材育成ーＯＪＴ」によってこそ成し遂げられるという当り前の結論には、陳腐ささえ感じてしまう。<P> ところが読み進めるうちに、この会社が成し遂げているソリューションの実例の生々しい説得力に、思わず快哉を叫びたくなる。まるで「青い鳥」と同様に、一番大切なものを求めて世界中を旅したあげく、自分のすぐ足元にあったことを発見したような「救い」すら覚える。<P> 企業の経営に携わる多くの悩める日本の経営者・ビジネスマン諸氏に是非一読をお奨めしたい。<BR> 日本再生を訴える書籍ではないが、著者のメッセージを素直に受け入れられれば、勇気を取り戻せる人が多いのではないだろうか。
