少し背伸びをして人文社会系の学術書に手を伸ばしている在野の素人読書家にとって、この事典の登場はまことにありがたい。見覚えのある、聞き馴染みのある用語なのだけれども曖昧にしかその概念を把握していないというような場合に、その語を調べようと一般の事典・辞典にあたっても載っていないことが多く（特に新語の場合はそう）、たとえ記載があったとしても簡略な説明が付されているばかりでとても納得がいかず歯がゆい思いをしていた。この本はそんなフラストレーションをかなり軽減してくれる。哲学・思想・文学・芸術・心理学・民族学・言語学など包括的文化理論の各用語がどのように発生し、その後どのように展開・応用されていったのか歴史的文脈を踏まえて説明してくれている。ちゃんと＜をも!!!よ参照＞も付いているので親切。調べものをしていると他の語も気になり、またそれも調べてしまうという繰り返しをしているうちに、いつの間にか理論武装の素地が出来上がってしまいそうな嬉しいお楽しみもある。うーん、\3,800でこの内容はグッド・バリューでしょう。