天才音楽家・思想家のグールドの本となると、ちょちょっとなーと思う人もいるかもしれないが、この書簡集は面白い！<P>グールドは筆まめに知らない人にも手紙を出している（ほとんどが依頼や問い合わせに答えるもの）。日本の人も出てくる。クラシック音楽畑でご活躍の木村博江さんは、ミスター・キムラと男性扱いになってるし、今や大人気の小澤征爾との共演を断る手紙も書いている。グールドは「鉄道マニア」だと書簡で言っている。鉄道マニアにはうれしい発見である。またマクルーハンとの交流と影響も、ちょっとした表現にさりげなく出ていて（これが絶妙なる和訳です）楽しめます。<P>グールドの展開する論理は、アドルノと似ている面があります。私の知り合いは、アドルノが言うと腹がたつが、グールドが言ってると納得できると申してます。そう、グールドの論理はピアノや音楽の構造分析を通してのおもしろさが、必ず根底にあります。この書簡集は、クールな面と同時におちゃめなグールドに触れることのできる絶好の書といえるでしょう。