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経済学という教養 ( 稲葉 振一郎 )

題名から経済学の初歩についてのわかりやすい手ほどきを期待する読者は肩透かしを食らうだろう。これは経済学についての本というようりも、経済学をめぐる日本の教養文化についての本である。<P>もとはHotwiredで今も連載中の「地図と磁石」である。著者の想定する読者は、標準的な経済学を専門に学んだ人ではなくて、たとえ経済学部にいたとしてもむしろポストモダンや評論などについつい手が伸びてしまったような人々ー人文系ヘタレインテリと著者は呼ぶーである。<P>この層の人々は日本では伝統的に教養の担い手となってきたわけだが、その教養に問題はなかっただろうか、というのが著者の底流にある意図のように思う。その問題を、主に現代の不況をめぐる経済論議にからめながら読み解いていく過程はスリリングだ。<P>とくにポストモダンから本題に入る第1章の鮮やかさは例をみない。反面第3章はちょっと論旨がもたついている。このあたりはやはり勉強しながら書いているという感じだ。ただしこれは本書の趣旨に沿っている。著者は、教養の本質は知識ではなくて、学ぶ態度だというのだから。<P>最大の注目は第7章のマルクス経済学についての記述だろう。人文系ヘタレインテリと親和性が高かったのはマルクス経済学であったし、著者が言うようにその問題点は現代の議論に大きな影を落としているのだから。さすがに著者が自家薬籠中のものにしているだけにこの章の記述は限りなく簡潔かつ正確にマルクス経済学の議論を整理し批判している。<P>そして、このマルクス経済学の批判という意味で本書は、人文系ヘタレインテリの反省でもあり、一部葬送でもあり、そして最終的な再生へののろしでもある。こういう本が登場するようになったこと自体に私などはある種の感慨を抱いてしまう。そう、私も少しはヘタレ系が入っていたからだ。<P>本書に問題がないわけではない。マクロ経済学の整理はどうかなと思うし(貨幣を効用関数に入れる小野モデルは貨幣経済のモデルなのか、など)、労働組合による賃金引上げという著者の政策提言はマクロ政策としては不完全であり蛇足の感がある。それにこれまでの人文系ヘタレインテリの世界(の匂い)を知らないとこの本の画期的な意味がわかりにくいということもある。<P>けれども何よりも思索を刺激する本である。そういう本は近頃珍しい。

捕捉するとしたら、学問論としての部分だろう。ポストモダン哲学にどっぷりつかって、現状批判ばっかりやって、まともな生産をおこたってきた人たちにとって、著者の自己批判は自分自身とどうしても重なり合ってしまうだろう。私もそうだった。多少なりとも、知的誠実さをもっていれば、浅かれ深かれ、著者と同じようなことを考えざるを得ないのだ。私は、経済学をある程度勉強してからこの本を読んだので、整理の部分には別段驚かなかった。だけれども、マルクス主義の吟味から浮かび上がってくる左翼的言説のはまり込んだ不毛・・・これは、現在、カルスタやポスコロやポモにだって言えることだ・・・の分析などはものすごく切れ味がいい。現代思想系から抜け出したときには、この本をじっくりと読んでみるべきだと思う。現実に向かい合う知識を得る方法を考えるためにも。

この本にはいくつもの顔があります。そのタイトルが示すように、目利きの経済論争ファンを育てるための経済学入門という顔もあれば、経済思想史の顔もあるし、リフレ本の顔もあります。<P>著者は、ホームページを見ればわかるように、現代思想から人工知能まで幅広い教養を持つ人で、本書にはその強みが随所に現れています。たとえば、ポストモダン思想の功罪をたった15ページで総括して見せるくだりなどは圧巻だし、本書全体としても、矮小化されがちな経済論争を、より幅広い思想的文脈のなかに位置づけることに成功しています。<P>でも、著者が一番やりたかったことは、おそらく、最近なにかと旗色がわるく迫害を受けがちな「サヨク」を励ますことだったらしく、本書は、西洋近代を否定しなくても、近代科学を否定しなくても、私有財産を否定しなくても、市場を否定しなくても、変動相場制を否定しなくても、不平等を否定しなくても、文化相対主義に走らなくても、モラリズムに走らなくても、なおサヨクの「志」を生かす道はあるのだ、ということを教えてくれる本になっています。<P>ただ、一つ気になったのは、本書では、不況の原因を実物的なものと貨幣的なものに分け、貨幣的な不況下での競争は、弱肉強食のぜロサムゲームになると言っているのですが、ホントにそんなにスパッと割り切れるのかどうか。もちろん、著者自身も、その点については但し書きを入れているのですが、本書全体としては、二分法による結論誘導の印象を与えるきらいがあると思います。もっとも、この辺は、数式を禁じ手にしている以上、仕方のないことなのかもしれません。<P>ともあれ、本書は典拠が明示されているので読書案内としても便利だし、正直たいへん勉強にもなったので、星5つあげちゃいます。

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